
サーバーの安定稼働を実現するためには、故障が起きてからの「事後対応」だけでなく、故障を未然に防ぐ「予防保守」が重要です。日ごろから定期的なメンテナンス・修理を行うことで、万が一のトラブルに備えられます。本記事では、サーバー予防保守の基本的な考え方や具体的な作業内容、導入のメリットについて、くわしく解説します。
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サーバー予防保守とは?
サーバー予防保守とは、サーバー機器やシステムが故障・障害を起こす前に、それらのリスクを予測し、あらかじめ対策を講じる保守手法のことです。英語では「Preventive Maintenance」と呼ばれ、製造業やインフラ業界では古くから取り入れられてきた考え方ですが、近年はITインフラの領域でもその重要性が高まっています。
サーバーを含むITシステムは、常に稼働していることが求められます。とくに、24時間365日稼働する業務用サーバーでは、突発的な障害がビジネスに大きな影響を与える可能性があります。予防保守は、そうした障害やトラブルを未然に防ぎ、サーバーの稼働率を最大限に高めることを目的としています。
具体的には、定期的なハードウェアの点検、ファームウェアやOSの更新、温度や電源電圧のチェック、異常ログの監視などを通して、劣化や潜在的な不具合の兆候を早期に発見し、対処することが行われます。予防保守は、事後対応に比べてコストがかかると考えられがちですが、実際にはダウンタイムによる損失や復旧コストを大幅に削減できるため、長期的に見ると非常に合理的な運用戦略です。
予防保守の重要性と必要性
サーバーは企業の業務やサービスを支える中枢システムであり、万が一トラブルが発生すると、業務停止や顧客対応の遅れ、売上損失といった深刻な影響を及ぼします。そのため、突発的な障害が起きる前に備える「予防保守」は、企業活動を継続させるうえで極めて重要です。
とくに24時間稼働しているサーバーは、長時間の使用によって内部の部品が劣化したり、ソフトウェアの脆弱性が顕在化したりするリスクを常に抱えています。予防保守を実施することで、こうした問題が可視化されて対策できるようになります。
また、近年はサイバー攻撃やデータ消失といったセキュリティリスクも高まっており、定期的なアップデートやログの監視が欠かせません。予防保守によってセキュリティ面の強化が図れる点も、大きなメリットと言えるでしょう。
このように、サーバー予防保守は、単なる「点検作業」ではなく、企業の信頼性や競争力を支える重要なインフラ施策と位置づけられています。
主な予防保守の作業内容
予防保守は、定期的なメンテナンスを通じてサーバーの劣化やトラブルの兆候を早期に察知し、対応することを目的としています。実際に行われる保守作業には、以下のようなものがあります。
ハードウェア点検
内部に溜まったホコリや汚れは、サーバーの加熱や故障の原因になります。定期的な清掃と部品の目視点検によって、物理的なトラブルを未然に防ぎます。
ソフトウェアの更新・パッチ適用
OSやアプリケーション、ドライバーなどのアップデートは、セキュリティリスクやバグの修正に欠かせません。最新の状態を保つことで、脆弱性を悪用されるリスクを減らします。
ログ監視と異常検知
日々の動作ログをチェックすることで、エラーの兆候や異常なアクセスを早期発見できます。蓄積されたログデータは、将来的なトラブル予測にも役立てられます。
セキュリティ対策の強化
万が一の障害発生時に備え、定期的なバックアップ体制を整備しておくことも予防保守の作業のひとつです。実際にリストアが可能かどうか、定期的に検証することも重要です。
予防保守とほかの保守の違い
IT製品の保守活動には、予防保守のほかに「予防保全」「予知保全」「事後保全」「完全化保全」といった種類があります。このうち、予防保全と予知保全はどちらも障害が発生する前に対策を講じるという点では共通していますが、そのアプローチには違いがあります。
たとえば、予防保全は「状態基準を用いずに、あらかじめ決められた周期で保守を実施する」方式です。一方、予知保全は「センサーなどで常時監視を行い、劣化の兆候が見られた時点で保守対応を行う」というスタイルが特徴です。
また、事後保守は、サーバーに不具合や障害が発生した後に対応する方法です。突発的な復旧作業になるため、コストや時間が読めず、業務停止リスクも高まります。完全化保全は、機器やシステムの保守というより、性能の向上や使いやすさの改善といった「改良」を目的とする保守です。
これに対し予防保守は、定期的に点検や清掃・部品交換などを実施することで、障害の予兆を早期に発見し、未然にトラブルを防ぐことを重視します。結果として、長期的なコスト削減や業務効率の向上につながるため、多くの企業が導入を進めています。
予防保守を導入するメリット
サーバーの予防保守を導入することで、企業はシステムの安定性や生産性向上といった多くのメリットが得られます。とくに、トラブルが発生してから対応する「事後保守」と比べると、リスクを未然に回避できる点が大きな魅力です。
定期的に点検や清掃、部品の交換などを行うことで、障害の予兆を早期に発見し、システムダウンのリスクを低減できます。これによって、サービス停止による業務の遅延や顧客対応の中断といった重大なトラブルを防止します。
また、障害が発生すると、緊急対応や機器の交換に多額の費用がかかりますが、予防保守を導入することで最小限のメンテナンスで済む可能性があります。長期的に見ると、運用コストの削減につながることもあります。
そのほかにも、IT部門の負担軽減も大きなメリットのひとつです。突発的な対応が減ることで、社内のIT担当者は本来の業務に集中して取り組めるようになります。なお、保守業務をアウトソーシングする場合には、より効率的な運用を実現できます。
予防保守をアウトソーシングするメリット
サーバーの予防保守は、自社で対応することもできますが、近年は外部の専門業者に委託する企業も増えてきています。とくに、IT部門のリソースが限られている中小企業にとっては、有効な手段と言えます。アウトソーシングすることで得られるメリットについて解説します。
人材不足の解消と社内リソースの確保
予防保守をアウトソーシングすると、専門的な知識やノウハウを持つ技術者による対応が受けられます。予防保守は単に点検を行うだけでなく、機器の状態を総合的に診断し、障害の予兆を見逃さない技術力が求められます。専門業者であれば豊富な経験と実績に基づく的確な判断が可能です。
自社でIT担当者を育成するとなると膨大な時間とコストがかかりますが、アウトソーシングであれば常に一定レベルのスキルを持つスタッフに任せられるので人件費や教育コストの削減につながります。社内リソースを本来の業務に集中させることができます。
安定したサービスの提供
多くの保守ベンダーでは、24時間365日体制でのサポートを提供しています。万が一、営業時間外にトラブルが起こった際にも、迅速に対応してもらえます。
これにより、ダウンタイムを最小限に抑え、安定したサービスの提供が可能となります。
まとめ
サーバー予防保守は、障害を未然に防ぎ、システムの安定稼働を支える重要な施策です。定期的な点検やアップデートにより、突発的なトラブルや長期ダウンタイムを避けることができます。自社での運用が難しい場合には、専門業者への委託も有効です。外部に任せることで、営業時間外のトラブルにも迅速に対応してもらえるというメリットがあります。なお、保守の代行を依頼する際は、月額固定料金で契約するのが一般的です。予算に限りがある場合は、複数の業者を比較し、自社に合ったサービス内容と料金体系を見極めることが大切です。将来的なリスクを回避し、IT資産を最大限に活用するためにも、予防保守の導入を前向きに検討してみましょう。