冗長という言葉を辞書で引くと無駄が多く長いといった意味が出てきます。しかし、サーバーの運用において冗長化は別な意味で使用されます。冗長性があるシステムはないシステムに比べて安定しているため、できるだけ冗長性を持たせた方がよいのです。今回はサーバーの冗長化の意味や必要性、注意点について解説します。
サーバーの冗長化とは?
サーバーの冗長化とは、サーバーの故障や突発的なトラブルに備えて予備の設備を準備することです。予備サーバーが一つであればサーバーの2重化、2つ以上であれば冗長化といいます。
メインで使用しているサーバーと別のメインサーバーと似た仕組みのサブサーバーを用意してトラブル発生に備えます。メインのサーバーで何らかのトラブルが発生したときは、予備のサーバーに切り替えてサービスの提供を継続します。
予備サーバーがあるおかげでサービスを中断させずに済むため、サービス利用者や顧客の信頼を失わずに済みます。冗長化の主な方法はホットスタンバイ、ウォームスタンバイ、コールドスタンバイの3つです。
ホットスタンバイはメインだけではなく予備のサーバーも電源に接続している状態で、いつでも予備サーバーに切り替え可能です。瞬時に切り替えが行われるため、サービスが中断されることなく継続します。
トラブル対応としては理想的な価値ですが、常に電源が入っているため他の方法に比べると維持コストがかさむというデメリットがあります。ウォームスタンバイは、電源は入っているもののメインサーバーと予備サーバーのデータ同期がされていない状態です。
電源が入った状態であるため、比較的早く対応できますがホットサーバーよりも対応速度が遅くなります。コストはホットスタンバイとコールドスタンバイの間です。コールドスタンバイは配線しているものの電源が入っていない状態です。
トラブルが発生した際に予備サーバーの電源を入れるところからスタートします。切り替えまでの時間はかかりますが、新規でサーバーを購入して設置するよりも早くサービスを復旧させられます。
コストは最もかかりませんが、対応に時間がかかることを頭に入れておく必要があるでしょう。サーバーの冗長化によって得られる安全性を冗長性といいます。複数のサーバーを用意し、万が一のトラブルに対応できる状況となっているサーバーは冗長性が高いといえます。
サーバーの冗長化の必要性
冗長化の必要性は企業によって異なります。たとえば、ITシステムが停止しても当面の活動に影響がない企業であれば、無理にサーバーの冗長性を確保する必要はありません。
電話で受注し、物のやり取りを行うタイプの仕事であればサーバーが止まっても不便ではありますが業務が破綻するところまではいきません。しかし、ECサイトで出品している店舗やECサイトそのものを運営している企業にとって、サーバーの停止は売り上げに直結する大問題です。
IT環境やサーバーへの依存度が高い企業であればあるほど、サーバーの冗長性が必要です。サーバーを冗長化する目的は大きく分けて2つです。
1つ目の目的はサーバー負荷の軽減です。1つしかないサーバーにアクセスが集中するとサーバーが破綻してしまう恐れがあります。予備のサーバーも稼働してアクセスを分散させサーバーダウンを防ぎます。
2つ目の目的はトラブルが発生したときの損失を最小限に抑えることです。サーバーが停止する理由はさまざまあります。アクセスの集中やサイバー攻撃、サーバーそのものの故障、ウイルス感染などサーバーは数々のリスクにさらされています。
予備のサーバーがあれば万が一、メインサーバーがダウンしたとしても予備のサーバーでサービスを継続でき、顧客の信頼を失わずに済みます。東日本大震災以降、企業が災害時に事業を継続するためのBCP(事業継続計画)を立案する必要性が高まっています。サーバーの冗長化はBCP対策の有力な手段となります。
サーバーの冗長化の注意点
サーバーの冗長化はサービスを継続するうえでとても重要な施策で、多くのメリットがあります。しかし、注意しなければならない点が2つあります。
1つ目はコストがかさむことです。サーバーの冗長化を実現するにはメインサーバーと同じ物を2つ以上用意しなければならず、機器の導入コストが増加してしまいます。ホットスタンバイの状態で維持するとなれば、維持するためのコストも計算に入れなければなりません。
2つ目は労力がかさむことです。機器が増えれば、当然、ネットワークの構成が複雑になります。チェックしなければならない項目も増加するため、保守コストが増加してしまいます。自社のエンジニアで対応できない場合は外部業者に依頼しなければなりません。
しかし、保守を外部に依頼すればコストがかかるだけではなく、業者の選定や自社の望む冗長化を実現するための指示が必要となり、その点でも労力がかさむでしょう。
まとめ
今回はサーバーの冗長化の意味や必要性、注意すべき点などについて解説しました。自社が提供するサービスを切れ目なく提供するためにはサーバーの安定性が欠かせません。そのためにはコストを投じても万が一の際に対応するための冗長化は欠かすことができない施策といえます。しかし、冗長化には大きな負担が伴います。自社の事業で冗長化が必要かどうか慎重に見極め、必要に応じて冗長化の投資を行った方がよいでしょう。